【仏領ニューカレドニアで暴動】独立問題に新たな火種

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2024年5月13日、南太平洋に浮かぶフランス領ニューカレドニアで、独立問題をめぐる大規模な暴動が発生しました。ヌメア中心部では、建物や車が放火され、警察とデモ隊が衝突するなど、緊張状態が続いています。記事元:NHK NEWS WEB

【仏領ニューカレドニアで暴動】ニューカレドニアを揺るがす独立問題:暴動勃発の背景は?

今回の暴動の背景にはフランスからの独立をめぐる長年の対立があります。先住民のカナックを中心とする独立派と、フランスからの残留を希望するフランス系住民の間で、根深い対立が続いてきました。

1987年にフランスからの独立を問う先住民投票では独立賛成が1.7%に対して反対は93.3%に達してフランスへの残留が決定しましたが、この時から大半の独立派は投票をボイコットしていました。また選挙後の1989年には独立反対派の要人が独立派に暗殺されるなど混乱が続いていました。

選挙制度改革への反発

今回の暴動はフランス議会が地方選挙権を与える現地の住民を拡大しようとする動きに独立派が反対、反発したためと見られていますが、どんな内容の選挙改革なのでしょうか。

選挙法改正法案

フランス政府が進めている選挙改革案は、島に10年以上居住する人に投票権を付与する内容で、従来の制度よりも移住者の発言力が大きくなります。独立派は、この改革案がフランスからの残留派に有利に働くものであると反発しています。一方、残留派は、改革によってより多くの住民が政治に参加できるようになると主張しています。

なぜフランスは遠く離れたニューカレドニアの地方自治体の選挙改革を行うのでしょうか?それにはニューカレドニアがフランスにとって独立を認めるわけにはいかない特別な地域だからともいわれています。

フランスの中のニューカレドニア

フランスはニューカレドニアに軍事基地を設置し、インド太平洋地域の重要な戦略地点と定めており、ニューカレドニアの独立は重要な軍事拠点や権益を失うことを意味します。一方、ニューカレドニアは電気自動車に不可欠なリチウムイオン二次電池に不可欠なニッケルの埋蔵量がインドネシアやオーストラリアなどに次ぐ世界第4位の多さといわれています。

独立の背後に見える中国の影

この資源の多さに目を付けたのが中国です。ニューカレドニアでは中国企業が相次ぎ開発に参入しており、最大の輸出国は中国となるなど関係を深めています。このためニューカレドニアが独立を仮に果たすとニッケル確保のために中国が接近するとみられています。フランス軍事省傘下の軍事学校戦略研究所(IRSEM)は2021年9月に作成した報告書の中で、中国が在外中国人を通じてニューカレドニアの独立派に接近していると指摘しています。記事出典:ウィキペディア

ニューカレドニア、暴動で非常事態宣言・CNN

ニューカレドニア:独立問題の複雑性と解決への道筋

フランス政府は、非常事態宣言と軍隊派遣による事態の鎮静化に努めていますが具体的な解決には至っていません。今回の暴動をきっかけに、単なる政治問題を超え、先住民のアイデンティティ、文化、歴史に関わる複雑な問題であるニューカレドニア独立問題。解決には、双方の立場を尊重した対話と相互理解に基づく、建設的な議論の場をフランス政府が設けることが不可欠だと思います。